人を動かす文章のデザイン
旅行の際に美術館によく行ったのですが、その際に思ったことがあります。
デザインは見る人、使う人に直接語りかけることができる、と。
例えば、ルーブル美術館にある、ヴェロネーゼの「カナの婚礼」。この絵は、当初は人々の豊かな表情で視線を奪い、次に、明るい部分を通じて中央上方の石像へと視点を動かします。石像の視線を辿ると空を羽ばたく鳥を見つけることができ、最後にもう一度全体を見直すと、中央に控え目にキリストが描かれていることに気づくことができるのです。
絵を見る順序や目線の動きが意図的にデザインされており、見る人は素直にそのデザインに従うことで絵を楽しむことができるようになっています。
この絵を見た時に、デザインとは見た目に限るものではないのだと感じました。使う人が作った人の意図した通りに動いてくれるように物を創ることをデザインと呼ぶのだと思います。
デザインを感じさせることができるのは文章も同じです。この文章を読んだ人がどのように動くかを意図して言葉を発することによって、言葉も力を持ちます。今回はそんな文章のデザインを考えました。
Objective
文章のデザインを考える!
Conclusion
受け手の「便益」を想像して書けているか?
Background
ビジネス文書の書き方、報告書の書き方、etc。全ての文書には書かれる理由があり、それゆえ各文書には効果的な書き方があります。
文書を書く時に大切なことは、構造的に書くことと言われます。ロジカルに、MECEに、ピラミッドに。確かにそうです。しかし、それは文章の骨格であって肉なしには文章は完成し得ません。
文章の肉とは、それを読んだ人を書いた時の意図の通り動かすことができる筋肉のようなものです。それが躍動感のある筋肉となるか、力のない贅肉となるかは受け手の想像ができているか如何です。
神田氏の「全脳思考」では、商品を提案する時にどこまで具体的に消費者の幸せにフォーカスできているかによって成功確率が決まるとします。また、大前氏の訳された「ハイコンセプト」には、右脳の活動を止めることなく想像性を持ち続けることによってのみ代替できない人物となることができると書かれていました。
相手がどれだけ喜ぶかを考えて行動する。日常生活では当たり前のことがことビジネスになると忘れられてしまいます。相手の喜ぶ顔、驚く顔を思い浮かべながらプレゼントを用意する。そんな気持ちで書かれた文にはデザインがあります。
文章を書きましょう、恋人に花束を渡すように。
…結構、難しいなぁ。
ではではー
<もっと知りたい方のために>
神田氏の10年間の仕事に対する思いが詰まった本となっています。物を売る時、企画を提案する時、さらには子供と接する時に、自分の意思をどのように表現するべきなのか。この表現の方法を知らないとなかなか自分の意図が伝わらないのではないかと感じました。ポイントはストーリーで、ステップアップに、相手をゴールへと導くことです。
三笠書房
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左脳だけでは、PCにとって代わられる。私たちは右脳を持っていることがアドバンテージなのですから。そんな左脳と右脳のリンクを強く意識させられる一冊です。左脳と右脳、文系と理系、本来は分けてはいけないのでしょう。本書を読むことで右脳的な考え方から新しい切り口を見つけるきっかけを得られると思います。
文章が面白くなるための要素は「動き」であると見抜いた一冊。冒頭のカナの婚礼の例に始まり、読み手が読み続ける文章を書くための様々な仕組みを提供してくれます。小説ほど、読者が読み続けることを意識してデザインしなければならない文書はないと思います。惹きつける何かを持っていなければ小説は読まれないのですから。
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