【会計士のマネセン2】-勝率5割では人は動かない?
ほとんどの経営者が言う言葉に、「勝率7割で勝負しろ」という言葉があります。
9割を待っていたら手遅れで、5割では機が熟していないという意味です。
ある意味その通りです。事業を安定させるためには勝率7割で勝負することが必要です。
ですが、素晴らしい経営者は本当の勝負どころでは50:50でも勝負をかけてきます。
これは何故なのか、というのが今回のお話です。
ケーススタディ
次のケース1と2では、あなたはどちらを選びますか。
<ケース1>
あなたは、クイズ番組で最後の問題まで勝ち抜きました。最後の問題にチャレンジするかにおいて次の選択肢が与えられています。
選択肢
①ここで断念。500万円がを手に入れて終了。
②2択クイズにチャレンジ。正解すれば1000万円ゲットも、外れれば賞金ゼロ。
<ケース2>
あなたは1000万円の借金をしてしまいました。あなたに残された選択肢は2つです。
選択肢
①貸し手と相談。500万円免除してもらい、借金を500万円にしてもらいます。
②コイントスをします。当たれば1000万円全額チャラですが、裏が出たら借金の金額は変わりません。
☆☆☆
如何でしたでしょうか。実験の結果、多くの人がケース1では①を、ケース2では②を選ぶことが分かっています。
ですが、実はケース①とケース②は言い方を変えただけで全く同じ問題なのです。500万円をキープするか、リスクを取って1000万円を目指すのか、というものです。
このように私たちの意思決定には問題の出され方によってバイアスがかかってしまうのです。このような意思決定の過程に関する理論をプロスペクト理論と呼びます。
プロスペクト理論とは
プロスペクト理論は、不確実性を含む問題に対する意思決定についての理論です。
エッセンスを一言で言えば、損と得は非対照ということです。
人は損を嫌い、得を好みます。そのため、不確実でも損を避けられる可能性があるならばその選択肢を選び、確実に得をすることができるのならばその選択肢を選ぶ傾向があるのです。
この損と得の性向は重大な判断になるほど顕著になってきます。
例えば飛行機で不時着をするか飛び降りるかの意思決定を迫られたとします。飛び降りる策では100人中50人が助かります。一方で、不時着を選択すると100人助かるか、全員助からないかのどちらかです。この問題の場合には、ほとんどの人が後者を選ぶことが分かっています。
プロスペクト理論を活かすには
人生の中で、どんなに考えても50:50の確率でしか先を見通せないことはたくさんあります。その時に、上記のようなバイアスがかかっていることを知っているだけで、より冷静に判断ができるようになります。
例えば転職と現在の職場を天秤にかけているとします。この場合に両者の条件がほぼ同じであると考えている時には、自分が確実な選択肢、つまり今の職場を選ぶ傾向が強いことはぜひ知っておくべきです。
本当は新しい職場で活躍するチャンスが50%もあったとしても、今の職場に留まる選択を採ってしまいます。つまり、私たちはチャンスを逃しがちであるということです。
本来はチャンスを逃してしまった時の損失についてももっと考えるべきなのです。
逆に、ピンチの時には反対の傾向が生じます。ピンチを脱出するためにギャンブル的な手段を取りやすいのです。経営が上手くいっていない会社が一発逆転に賭けるのもこの理論から説明できそうです。
結論 -勝率5割でも直感を信じよう!!
勝率5割では足りないと感じることは、この理論からは当り前なのです。
そんな時は、不確実さを含む選択肢を嫌わないで、もう一度冷静に考えてみましょう。実はチャンスを逃しそうになっているかもしれません。最後は直観を信じて決断です。
あと一歩が踏み出せない貴方に。
ではではー
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