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ブルーオーシャンはどこにある? - ブルーオーシャン戦略pt.1

ブルーオーシャン戦略は新市場を切り開き、競争とは無関係の状況を創り出す経営戦略です。

Blue Ocean & Sky
Blue Ocean & Sky Photo by Good Glass Photos

競争に関して様々なツールが出回り、その運用に企業が習熟するほど、競争は激化していきます。皆がまじめに考えるようになったら、そりゃ大変なことにもなりますよね。既存の競争を続ける限り、新しい分析ツールの導入と組織的な適用という体力勝負は避けられません。この競争の激化した既存市場を本書ではレッド・オーシャンと呼んでいます。

公認会計士試験も専門学校が朝7時から講義なんか始めるもんだから、受験生の競争はさらに激しいものとなってしまっていました。そして、体力的にダウンする人が続出。まさにレッド・オーシャン…

そこで、競争をしなくて良い市場を造り出すことに注力しましょう、というのがブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する (Harvard business school press) の趣旨です。本書では企業が探すべきブルーオーシャンは以下のように定義付けられています。

いまはまだ生まれていない市場、未知の市場空間のすべて(P.20)

では、このブルーオーシャンをどのように創り出すべきか…という議論に入る前に、今回は何がブルーオーシャンなのかということを考えてみます。

 

レッドとブルーのあいだ


既存の市場がレッドで、新しい市場がブルーなので、全く新しい製品・サービスを提供するもの以外はブルーにならないのでしょうか。では全く新しい製品・サービスとは?

本書では、シルク・ドゥ・ソレイユが「サーカス」というカテゴリーの中で新市場を創った例として挙げられています。サーカスはバリバリの競争市場。その中でユニークなスタンスを採ったことによりブルーオーシャンを創出したとされているので、必ずしも商品・サービスが既存のものから派生してはいけないというわけではないようです。

では、シルク・ドゥ・ソレイユの何が新しかったのかと読んでいくと、以下の文章に当たります。

要するに、シルク・ドゥ・ソレイユはサーカスと演劇の枠だけを集め、それ以外の要素は取り除くか役割を軽くした。かつてないほど大きな効用をテコにブルー・オーシャンを創出し、伝統的なサーカスとも演劇とも一線を画した、ライブ・エンターテイメントの新境地を切り開いたのだ。(P.35)

シルク・ドゥ・ソレイユが新しかったのは、サーカスでもない、演劇でもない新しい「ショー」を創り出したことにあります。この新製品が今までサーカスの対象外となっていた消費者=少し年齢層の高い家族連れやカップルという新しい消費者層にリーチしたのです。

その意味で、シルク・ドゥ・ソレイユのサーカスはサーカスに区分されるものの、既にサーカスでは無い何かであると言えます。このように、既存のものと似ているのだけれども、明らかに何らかの機能が違う製品・サービスを生み出すことがブルーオーシャン戦略であると言えそうです。

 

機能が違うとは?


機能が違うとは、その製品・サービスを使うことによって得られる価値が既存の製品・サービスとは違うことを指すと言えます。

例えば、電気自動車。これはブルーオーシャン戦略にて生まれた製品なのでしょうか。僕は違うと思います。電気自動車を使うことによって得られる価値は移動手段という意味で今までの製品と変わりません。そのため、電気自動車はレッドオーシャンの競争の中で生まれた既存の製品であると言えます。

一方で、よく言われるのがWii。こちらは、一人で楽しむようになってきていたゲームを再び皆で遊べるものにしたという価値を生み出しています。これは、一人のプレイヤーをいかに上手く楽しませるかに特化してきていたゲーム市場で、皆で遊べるという新しい機能を創出したという点でブルーオーシャン戦略であったと考えてよいでしょう。

つまり、新しい価値を生み出して、新しい顧客層にアプローチすること。それがブルーオーシャンを創出することと言えそうです。

 

創り出した海は本当にブルーオーシャンなのか?


ひとつ疑問なのが、当事者がブルーオーシャンを生み出したと考えていても、さらにマクロな目で見れば階層の違うレッドオーシャンに入っただけとも考えられるのではないか、ということです。シルク・ドゥ・ソレイユは新しい市場を生み出したと言えるかもしれませんが、競争相手が既存のサーカスではなく、新スタイルの演劇に変わっただけとも見ることができるのではないかと思います。

シルク・ドゥ・ソレイユの新しい競争相手としては、演劇のブルーマンや、劇団四季、イリュージョンショーなどが挙ってくるのではないでしょうか。市場をレイヤーとして考えると同じ単価で知的な演劇という価値を提供しているものが新しい競争相手になりそうです。

さらに、家族向けレジャーやエンターテイメントで区切れば、シルク・ドゥ・ソレイユは遊園地やWiiとも競争しているとも言えます。お客の財布も時間も一つしかないですからね。こう考えると、異種格闘技に参戦しただけではないかとの疑問もわくのです。

競争相手の階層
競争相手の階層 Photo by 130shin

 

まとめ


ブルーオーシャンは新しい価値を新しい顧客に届けることによって生まれます。ただ、それは別のレイヤーでのレッドオーシャンに入っただけとも言えるかもしれません。しかし、既存のレッドオーシャンでは明確な差別化を図ることができているわけですから、単なる体力勝負を避けることはできています。

体力勝負は消耗戦です。消耗戦では最後に両者共倒れということもあり得ます。そのような事態を避けるために、積極的にブルーオーシャンを意識して戦略を立案する必要があるのでしょうね。

ブルーオーシャン。簡単な概念のようで、いざ考えてみると難しい。その深さが全世界で活発な議論を呼ぶ理論たる証左なのでしょう。

ブルーオーシャン戦略については、まだ何回かエントリーを考えています。宜しければおつきあいを。

ではではー

cf.ちなみに、冒頭の定義は僕の理解です。より詳しくは本家のページをご参照ください。

関連エントリー

関連リンク

ランダムハウス・著者インタビュー
Blue Ocean Strategy

 

参考図書

ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する (Harvard business school press)
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