マイクロソフトは何を買ったのか?
マイクロソフトがスカイプを85億ドル(6800億円)で買収すると発表しました。スカイプは言わずと知れたインターネット通話の雄。そのスカイプをビッグネームのマイクロソフトが買うということで、業界は大騒ぎです。
既に今後のサービスの展開やマイクロソフト製品との関連などについては熱くTech系の方々が語っているので、会計&戦略的な目線から考えてみたいと思います。
Microsoft Skype Photo by AksgeekLive
買収価格が高すぎる?
今回のマイクロソフトの買収価格は高すぎるのではないかという意見が多数派です。
マイクロソフトが今回示した価格はスカイプの売上高の10倍に相当する。グーグルの時価総額ですら売上高の5倍強だというのにだ。買収価格はスカイプの昨年の営業利益の400倍強に相当する。(ロイターブログ)
実際にスカイプの企業価値を単独で見るとそうなのだと思います。営業利益の400倍ということは、ごくごく単純に考えれば投資の元を取るのに400年かかる買い物だったということです。
他にも、現在の株主であるeBayは2005年にスカイプの30%持分を26億ドルで買ったのですが、2年後に14億ドルの減損を計上するということがありました。2年間でeBayが思っていた金額の半分しか企業価値が認められなかったということです。
また、スカイプの新規上場時には将来的に同社の企業価値は50億ドルに届かないとも見られていたそうです。そのことからも,やはりマイクロソフトの提示した価格はかなり強気な金額であったと言えるでしょう。
なぜマイクロソフトはスカイプを買ったのか - 会計的な考え方
では、なぜマイクロソフトは高額でスカイプを買収したのでしょうか。
会計上、企業の買収時に払ったお金は買収された会社のさまざまな資産に振り分けられます。その時に、今のスカイプでは会計上では認識していない資産にも値段をつけるというプロセスがあります。
このスカイプが会計上認識していない資産の中でマイクロソフトが価値を見いだしている資産として、「ユーザーとの関係」があるのではないかと思います。スカイプが持っているユーザーとの関係をマイクロソフトが上手くすくいあげることで、マイクロソフト製品を通じたコミュニケーションを更に広めることができると考えているのでしょう。
また、出遅れているWindows Phoneのためのサービスを作り上げることも考えているのだと思います。現在のスカイプユーザーにとって使いやすいサービスを携帯電話でも提供することができるとしたら、他社との差別化要因となります。
ただ、それにしても買収金額が大きすぎるので、ある程度顧客関係に買収金額が振られたとしても、かなりの額が「のれん」 = 将来の収益の期待という差額の勘定に振られてしまうのではないでしょうか。
なぜマイクロソフトはスカイプを買ったのか - 戦略的な考え方
会計上では説明がつかないとしたら、戦略上多額のコストというマイナスを正当化するプラス要因が必要となります。それは何なのでしょうか。
僕は、今回の買収は防衛的な買収だったのではないかと思っています。
スカイプの買収にはGoogleもFacebookも興味を示していたと言われています。この2社がスカイプを買収した場合には、OutlookやCommunicatorといった既存マイクロソフトのコミュニケーションソフトに対して大きな脅威となります。特にGoogleはマイクロソフトと同じ製品を限りなく低コストで提供する戦略を採っていますので、その価値が増すことはマイクロソフトにとって非常に危険です。そのため、連携したサービスを開発されないように、スカイプを買収してしまったのではないかと思います。
2009年にオラクルがサンマイクロシステムズを買収した時も、a.高い価格で、b.複数の競争相手がいる中で、買収が行われました。これは、オラクルが自分の市場を脅かしていたサンマイクロシステムズを買収することによって、自身の強化を行うとともに脅威を減らすという一石二鳥の買収であると言われていました。
今回のマイクロソフトからも同じような感覚を受けるのは僕だけでしょうか?
IT業界は本当に面白い
IT業界は産業としてライフサイクルが早く、イノベーションも数多く生じます。中で働いている方々は大変だと思うのですが、こんなに面白い業界は他ではなかなか見当たりません。
おそらく、他の業界でも同じようなことが将来的に起こるのではないかと考えています。学ぶことの多い業界でもあります。
今日はGoogleが話題をさらいましたね。そちらも今後考えてみたいと思います。
ではではー
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