オススメ本を広めたい!

ビジネススクール教授のオススメ本まとめ

ビジネススクールに1.5年通いまして、様々な先生方から様々な本のご紹介を頂きました。終わりも見えてきたところで、一度まとめておきたいと思いエントリー。

Libraries are CreepyLibraries are Creepy / Paul Lowry


戦略系


華の戦略系。学んだのは仮説を立ててそれを検証するプロセスを採るべきということ。

 

経済系


基本的な行動ファイナンス、経済性分析、ゲーム理論は押さえておいた方が○。

 

人材系


組織は人から成り立っているのだから。

 

ファイナンス系


計算できるようになるよりも、結果を理解できるようにというスタンス。

 

人文系


先生方が個人的に好きと言われた本にハズレ無し。

 

まとめ - 迷いながら道を広げよう!


当然、人に勧められた「良いもの」を消化するだけでもだめだと思うのです。自分のニーズに合っていることが一番大切で、ニーズに合った情報を探すという過程も大切なのだから。

一方で、ニーズに合致しているのならば、先人の肩に乗っかることもまた必要です。先人も悩みながら手探りで探した情報を紹介してくれているのですから。だから自分の求めている情報を先人の紹介の中から探すということは極めて合理的な行為だと思います。

キュレーションという言葉はもっと一般的になると思います。良いものを見極めて広める行為です。この行為、まずはキュレーターの方を信頼することが一番大切。逆に、信頼できるキュレーターがいるということは何よりも有り難いことではないでしょうか。

巨人の肩から、遠方を。

ではではー

 

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最速で利益を生み出すために - 本の紹介リーンスタートアップ

今年一番の「マネジメント」本。

 

 


起業は「マネジメント」できるのか?


リーンスタートアップの要旨を一言で言えば、「PDCAサイクルによるマネジメントを徹底しましょう」ということになる。目新しいのはそれをスタートアップという「マネジメントできないと思われているもの」に適用したことだ。

これを珍しいと思うのは、僕らのスタートアップに対する特別な感情を反映のせいだと思う。スタートアップはクリエイティブで特別で、とても一般人ができるものではない、という思い込みだ。

それはきっと半分は当たっているが、半分は当たっていない。スタートアップも「仕事」なのだから。前例がなく、不確実性が高いという環境的な違いはあるのだけれども、だからといって仕事のやり方を全く変える必要はない。

 

構築⇒計測⇒学習…のサイクル


仕事は学習のためにやるものではない。僕らが経験を積んだことはお客様にとっては全く関係ない。お客様が満足できる価値を提供できなければ意味がない。

それでも、学習を重視するのは、それがお客様に価値を提供するための唯一の方法だからだ。そして、学習するためには、経験を積むことが必要になるし、経験を積むためには体験するしかない。

だから、まずはやってみることが必要になる。細かく経験を積み重ねることが必要だ。この考え方は、以前紹介したのスクェア・エニックスのCTO、橋本さんの考え方にも通じることがあると思う。

一番大切なことは、この1サイクルをいかに短く回すか、ということにある。

Leanstartup
Leanstartup Photo by 130shin

 

大企業に求められる差別化


大企業や政府、あるいは名前の売れてしまったクリエイター、社内で評判となってしまったエース社員にとってはこの方法は脅威となる。なぜなら、彼らは初動でかなりのものを求められてしまうからだ。

名前の売れていない時には、求められるクオリティは必要最低限なものである。だから、平気で成果物をバンバン出すことができた。しかし、名前が売れてしまうと「必要最低限」なものにもクオリティも高いものが求められてしまう。だから、成果物を出せなくなる。

それでも、まず成果物を出すことが大切なのではないか。

この点、Appleはすごい。初代iPadもまず市場に出している。そして、2nd、3rdと世代を重ねて完璧を目指す。初動のクオリティもすごいのだけれども、このやり方自体が上手いと思う。

 

まとめ - Done better is than perfect.


失うもののない僕らは、まずはやってみることが大切なんだと思う。これは、評判という後ろ盾のない者の特権だ。そして、経験を積み学習する。その過程でいろいろなお客様に迷惑を掛けることになってしまうかもしれない。

だけれども、唯一僕らにできることはできるだけ早く期待水準を満たすものを創り上げることなのだ。

この考え方は少しでも良くしたいと思うもの、全てに使える考え方だと思う。まずは、やること。求められる初動のクオリティはその後に考えれば良い。

何かを良くしたいと考える全ての人に。

 

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達人と持続する情熱 - 本の紹介: 勝ち続ける意志力

達人には共通するものがある。自分の中に見出した光に取り憑かれ、懸命に、執拗に繰り返し技術を蓄え、一歩一歩高みに登る姿だ。その姿は鬼気迫るが、美しい。


 

 

 

読む前に感じよ


紹介を始める前に、動画を一つ見て頂きたい。本書の冒頭でも触れられている「37秒の奇跡」だ。


これはカリフォルニアで開かれたゲームの祭典「Evolution 2004」の動画である。これをやってのけたのが本書の筆者、梅原大吾氏である。

このゲームのことを何も知らなくとも、この会場の盛り上がりに熱される。それだけこの展開が偉業だったということなのだが、それもそのはず。このコマンド、1/60秒の精度で入力する必要があるのだ。1/60秒はカメラの瞬きより短い。

対戦相手のことを知るともっと驚く。ジャスティン・ウォンという選手はあるゲームでは4年間大会で負けがなかったほどの猛者だそうだ。あまりにも強いため、負けると会場が沸くのだ。

初めて見た時からこの動画はずっと印象に残っていた。そして、書店で本書を見つけた時、表紙を見ただけで気づいた。この本の作者はこのプレイヤーだと。

 

日本にプロゲーマーという職業を創り上げた男


意外にもビデオゲームの聖地である日本にはプロゲーマーという職業がなかった。梅原氏が初めてスポンサー契約を結び、プロゲーマーとなったのは2010年のことだ。その時のスポンサーも日本企業ではなく米国企業だ。

それだけ、日本での「ゲーマー」というものの地位の低さが表れている。梅原氏は外からの、そして自分自身のゲームに対する白眼視にずっと耐えてきた。本書を読むと子供の頃から、梅原氏が「なぜ自分にはゲームなのか」と悩み続けつつもゲームと共に歩んできたことが分かる。

日本という国にいながら、同氏が社会的な地位を、つまり、一つの公式な職種としてゲーマーの座を得たのは29歳の時である。同氏が初めてゲームに出会ったのは5歳のとき。その間、時間にして約25年。言葉に発せば短いが、その間に感じ続けた疎外感や迷いは他人には理解できないだろう。


達人だって悩み苦しむ


現に同氏の人生は悩みであると言っても過言ではない。ゲームを初めて悩み、上達して悩み、世界一になって悩み、一時はゲームから離れ、介護の世界も見ている。だが、迷いの度に同氏は強くなっているように感じた。それは、自分の道を一度脇に逸れることで見直しているから、そして、脇に逸れる度に人の心を理解していくからだ。

好きなことをしていればずっと楽しいわけでは決してない。好きなことだからこそ苦しいことにも耐えられるのだ。そんな、苦しみにすら耐えられる、大切な一つのことに出会えるということはとても幸せなのだと思う。

人が苦しまないことなんてない。苦しみながらも続けられることと続けられないことがあるだけだ。


まとめ - 続けられること、それがあなたの大切なこと。


平坦な人生はない。一時はしゃがみ込み、時には道から逸れ、それでも続けたことが人を創り上げる。

誰だって悩み苦しむ。その悩みに真摯に向き合って、それでも続けたいと思う何か。それが人生にとって大切なことなのだ。

苦しいだけの努力はしてはいけない。自分を痛めつけて能力を高めても、一時的にしか続かない。続けること、それはそれだけで一つの才能である。

そう本書は語りかけてくる。

持続する情熱を胸に抱くすべての人に、本書を。

 

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本の紹介 - 戦略不全の論理

戦略不全の論理―慢性的な低収益の病からどう抜け出すか
三品 和広
東洋経済新報社
売り上げランキング: 49847

 

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本の紹介 - さよならドビュッシー

僕たちは自分という存在の証明のために生きている。

さよならドビュッシー (宝島社文庫)
中山 七里
宝島社
売り上げランキング: 21340

 

 

健気さに心打たれるとか、頑張っている姿に感動するとか。そんなキレイな話では決してない。もっと生々しく彼女は戦っていた。自分を押し潰そうとする全てと。

ピアニストを目指す彼女に災難が訪れるのは、ドビュッシーにさよならを言う終章から遡って4ヶ月。家が焼け落ち、最愛の家族を失い、自分も全身に重度の火傷を負う。

周囲の好奇の目、嫉妬、普通じゃない者の拒絶。そして、ピアニストとしての存在を奪おうとする皮膚の麻痺。そんな中で、一人だけでも頼ることができる人がいたというのは、どれだけ心の支えになったのだろう。

物語が常に問いかけてくるのは、自分とは何かという存在の意義。それが、音楽という最も感情に近い表現手法の中で繰り返し繰り返し問いただされる。

圧倒的な表現力の中で、ページをめくるたびに強烈な旋律、情熱、眼の眩む光、そして安らかな心地が伝わってくる。行間から音が漏れ出し、次第に頭を、最後に胸を熱くする。本という形を採った協奏曲だった。

まばゆい限りのスポットライトの中で、彼女は自分を見つけた。それは決して与えられたものではなくて、彼女が勝ち取ったものだ。生きるということを体の全てで表現する彼女が少し羨ましくもある。

生きることは戦いだ。それは、自分が自分であるために、世界に存在を刻み込むことである。

小さくてもいい。自分という存在を少しでも深い痕跡に。

そんな熱さをくれる一冊。

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本の紹介: 戦略プロフェッショナル

ビジネスパーソンならば、必ず読むべき一冊。

様々な知識を統合して、一つの使える知恵として身につけることは想像以上に難しいことです。その難しさゆえに、多くのMBAホルダーが部分最適を図ってしまい、逆にうっとうしがられて何も進まないという事態が起こるわけです。

本書は知識の統合と使える形での体得という、悩ましい問題に示唆を与えてくれる貴重な一冊。読者は主人公・広川と共に、戦略の立案・実行を経験していきます。読み進めると、理論の一つひとつを、知恵としてどのように活用すればよいのかを疑似体験できる名著です。

とにかく、リアル。

その理由は、実話を基にした物語だからでしょう。筆者が文庫本の発刊の際に初めて明かした、「これは自分の物語だ」という事実。そのストーリーが理論を理論に終わらせず、活きた話として心に飛び込んできてくれるのです。

ビジネススクールでは、ケーススタディという実際に起こった事案を基に、何が問題なのか、どうすれば良いのかを考える授業があります。その全てが「実際にあったこと」にこだわっており、架空の話は一切ありません。それは、リアルだからこそ、その時のその人になりきって考えることに近づけるからです。

本書は現実です。現実だからこその学びがあります。

筆者があとがきで記している通り、現実にはもっと理論的ではないことが沢山あります。理論は必要条件であり、十分条件ではありません。ですが、理論無くして十分条件を満たすことができないのも確かです。

PLC、PPM、セグメンテーションなんか知ってるよ、という全ての方に。

「わかる」と「できる」は違うことを知るために。

ではではー

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もし新社会人に1冊だけ本を薦めるならば

たくさんの期待と少しの不安を胸に、今年も新入生が社会人の仲間入りをする季節となりました。今年はどんなコが来るのかと楽しみな季節でもあります。

では、そんな新入生の皆さんに、たった一冊だけ先輩風を吹かせて本を紹介するとしたら、どの本を紹介するかなぁと思って考えてみました。

結論は、こちら。

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則
バーバラ ミント グロービスマネジメントインスティテュート
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 1457

 

 

仕事上の文章の書き方として定番とされている本ですが、それ以上に僕はコミュニケーションのあるべき姿が書かれていると思います。

組織で生きるために一番重要なのはコミュニケーション

僕が新入生として会社に入ったときに一番最初にビビったのが、話が通じないことでした。先輩が、上司の方々が何を言っているのか全く理解できないのです。その上、自分が考えていることも上手く伝えることができずに、様々な方に迷惑をかけました。

会社とは組織です。皆で集まることによって、一人ではできないような大きなことを目的としている集団です。だから、組織として目的を達成するために、皆がお互いを理解して協働する必要があります。このことが、組織の中で生きることの難しい部分であり、面白い部分でもあります。

コミュニケーションが難しい理由を考えると、下の3つなのではないかと思います。

1. 人によりバックグラウンドが違う(持っている情報が違う)
2. 利害が対立する
3. メッセージが明確ではない

1.はそれぞれの生き方に、2.はそれぞれの立場に起因するものなので部分的しか解消できません。そのため、僕はどんなにがんばっても完璧なコミュニケーションというのはあり得ないと考えています。ですが、メッセージを明確にすることで、少しでも完璧に近づくことはできるとも信じています。

メッセージを意識するということ

コミュニケーションの際には情報を送る時も受け取る時も、メッセージを意識することが一番大切です。コミュニケーションは、送る側のメッセージを、受け取る側が理解することで完成します。そのため、送る側は自分が何を伝えたいのかをはっきりと理解していることが、受け取る側は相手の伝えたいことは何かを考えることが必要となります。

話をする時や文章を書く時に、「自分は何が言いたいのか」を意識して発信する時としない時では明らかに伝わり方が違います。同じように情報を受け取る時も「相手は何が言いたいのか」を意識することは理解の効率を上げてくれます。

そんな情報のやりとりの形として、冒頭の本ではピラミッド型の構造が勧められています。ピラミッド型の話の構造とは、一番言いたいことであるメッセージを頂点に、それを様々な情報が下支えするような構造です。

2011-03-28 03h15_17

聞く時、読む時にこそ意識しよう

このピラミッド型の意識、自分が発信をする時にはなんとか意識することができるのですが、受け手になると難しさは一段増します。受け取る側に立つとついつい楽をして、相手が説明してくれるのをただ聞いているだけの状態になりがちです。文章を読むときに字面を追っているだけになってしまっていることはよくありませんか。それも、受動態になっているから起こってしまうことです。

年次が低いときは指示を受ける機会の方が多いもの。上の人が何を言っているのか、先輩は何のためにコミュニケーションしてきているのか、この文章は何が言いたくて書かれたのか、そんなことを意識して聞くことの方が大切だと思います。

ちゃんと、相手のメッセージを捕まえることができていれば、少しぐらい指示が曖昧であったり、内容が難しかったりしてもなんとかなるものです。逆にメッセージを全く理解できなければ、質問する必要があることに気づきます。メッセージを捕らえることを繰り返していれば、「あいつは話の理解が早いやつだ」、と評判も上がっていくはずです。

結論 - コミュニケーションは難しいからメッセージを意識しよう

偉そうに書きましたが、本当にコミュニケーションは難しいです。僕は何回も何回も失敗して、その都度様々な人に迷惑をかけ続けています。ですが、組織の一員として働くからにはコミュニケーションは決して避けられませんし、上手くできた時は皆との意識の共有を感じられる本当に嬉しい瞬間でもあります。

僕は冒頭の本を毎年4月になると読み直しています。単なる文章術を超えた、コミュニケーションの本質を伝えてくれる良書です。

もしお持ちでなければおひとつ。

ではではー

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本の紹介 - クルーグマンの良い経済学悪い経済学

今までの自分の見方が根底から否定されていて、少しショック。。

良い経済学 悪い経済学 (日経ビジネス人文庫)
ポール クルーグマン
日本経済新聞社
売り上げランキング: 7216

著者は2008年のノーべル経済学賞の受賞者。ちなみにノーベル経済学を採る前から有名だった経済学者というとっても稀有な方でもあります。その有名になった理由が貿易理論で既存のパラダイムに挑戦状を突きつけたからでした。

本書は表向きはその貿易理論に関しての著者が様々なメディアで披露した論文の集約。一方で、またの名を俗説の吊し上げ。もう巷の諸説を斬るわ斬るわ。

のっけから批判で入ってきます。しかも名指し。曰く「新興国脅威論は誤り」、曰く「競争力という言葉を使って企業の競争と国の競争を混同するな」ですって…あーあ。それって僕も過去エントリーで書いちゃってるのですけど…

なぜ国と企業を混同してはいけないかという理由はぜひ本書でご確認頂くとして、国を企業と置き換えて説明することってすごくポピュラーだと思いませんか。それこそ、政治家の方々が積極的に使うぐらい。でも、それは難しい事象を簡単に説明しているように見せるためのウソである、と。

当然著者が間違っている可能性だってあるのですが、一般的に使われる比喩に学術的な問題があるということは社会人として絶対に知っておいた方が良いと思うのですよ。そうじゃないと、大事なところで即disられる可能性があるわけです。

そう。つまり、本書は「経済について話す時にdisられないために読むべき一冊」!!。とっても消極的な理由ですが教科書では教えてくれないことでもあります。まさにこういう本こそが「必読本」なのではないかなぁーと思うわけです。

もし経済学の本なんてどうしても読みたくないって場合でも、「第8章-大学生が貿易について学ばなければならない常識」だけには目を通した方が良いと思います。イタい間違えの代表6つ。ええ。当然その中に「雇用、雇用、雇用」も入っておりますよ。。

僕のように失敗する前に。ぜひ。

…経済学、もう一度ちゃんと勉強しようっと。

ではではー

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本の紹介 - ストーリーとしての競争戦略

あなたはブログを書こうとしている。悶々と悩みようやくタイトルを決める。

段々と書くことに慣れてくる。テンプレート化を進め定期的にエントリーをポストできるようになる。エントリーの質も高まってきた。注目を集めるようなタイトルを付けられるようになり、SEO対策も完璧だ。Twitterも始めた。

それでも、人が来ない。。

実はこれ、数多くの企業が悩んでいることと全く同じだったのです。世の中には無数の企業が激しい競争を繰り広げています。その中で一握りの企業が頭角を現します。その一握りの企業が他の企業と何が違うのかというと、儲けるための明確なストーリーを持っている、というのが今回の本のテーマです。

 

 

つまり、ストーリーとしての競争戦略は、「儲け話」の研究です。

この本は様々な企業の様々な儲け話を集めています。今回のエントリーでは本書の中のアマゾンの記載だけに注目して本の流れを追ってみます。まえがきで順を追って読んでくれと頼まれてしまっていますので。

まずはコンセプト
アマゾンは何をお客に提供しているのでしょうか。

本?もちろん。ですが、本を売っている会社なんてたくさんあるのです。その中で、アマゾンだけがなぜ伸びたのか。

アマゾンの創業者は語ります。

「アマゾンは物を売っているのではなく、人々の購買決断を助けることをビジネスの中核としている」

あぁ、なるほどなぁ。アマゾンのサイトにすぐに飛んでみてください。商品の基本的な情報はもちろんのこと、立ち読み機能、作者での検索、他の人が何を読んでいるのか、カスタマーレビュー。無数の購買決断のための情報が並んでいます。これらが、アマゾンの価値です。

大量の品揃え、配送料無料、キンドル。巷で話題になるアマゾンのニュースは、アマゾンにとってはより消費者と繋がるための手段であって、本質的な機能は選ぶことを手伝うことだったのです。

強く、太く、長いストーリー
本書のP.42にアマゾンの戦略ストーリーの図が書かれています。

アマゾンがお客の購買決断をサポートする→お客が良い経験をしたとして商品に関する情報を提供してくれる→たくさんの人が訪れるサイトになってより多くの売り手を惹きつける→さらに商品に関する情報が増える→より多くの人が訪れる→より多くの売り手を惹きつける→(無限ループ)

何をお客に提供し、どのようにお客を増やし、お客が増えることがどのように機能するのかが一目で分かります。

購買のサポートがお客の良い経験を創ります。加えて、お客の良い経験を増やすために大量の品揃え、配送無料、キンドルがあります。それらがさらにお客の良い経験を創り出します。良い経験からお客の数が増え、売り手を増やし、さらにお客を増やすという正の循環が生まれます。

本書では、ストーリーの良さを3つの点から評価します。構成する要素間の因果関係(強さ)、要素の多さ(太さ)、継続性(長さ)です。アマゾンの儲け話はこの3点から見て非常に良い話であることが分かります。

与太話に近かった儲け話が理論的に理解・分解された瞬間です。

スパイスとしてのキラーパス
戦略はトレードオフです。何かを得て何かを捨てることが戦略です。この捨てたもの、キラーパスが絶妙であるためストーリーがマネされず長続きします。

アマゾンが捨てたものは何だったのか。それは身軽さでした。

アマゾンは商品の効率的な配送のために自前の倉庫を持っています。この倉庫への投資が他の企業と全く異なるレベルなのだそうです。1994年に創業されたアマゾンは、4年間で売上を3200倍にした一方、赤字も2300倍にしたそうです。倉庫への投資が嵩ばったせいです。

良いサイトを作るだけでも人は集まったはずです。しかし、現実の世界に高度な配送センターを持つことが他社にはできない商品の迅速な配送を可能としたのでした。今では、配送料無料、当日配送サービスなど他社には無いサービスが創りだされています。これがアマゾンの儲け話をマネしにくくしています。

ストーリーとしての競争戦略を読むべき人とは
アマゾンの話を中心に本のストーリーを追いました。優れた企業の優れた儲け話は読み物としてもとっても面白く、ついつい人にも話したくなってしまいます。

そう、人に話したくなる面白い儲け話こそ儲かるのです。

こんな面白い本を、会社の経営企画部の人たちだけのものにするなんてもったいない。

ブログを書いている方、個人で事業を営んでいる方。
厳しい社会の中で、自分の足で立ちたいと思っている全ての方に読んで欲しいのです。

おもしろきことも無き世をおもしろく。

そんな貴方へ。

ではではー

<オススメの面白い話>
本の紹介 - 任天堂"驚き"を生む方程式

本の紹介 - 奇跡のリンゴ

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本の紹介 - 群れのルール

群れのルール 群衆の叡智を賢く活用する方法 群れのルール 群衆の叡智を賢く活用する方法
ピーター・ミラー 土方 奈美

東洋経済新報社  2010-07-16
売り上げランキング : 3391
おすすめ平均 

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社会は生き物だ。また忘れていたことを思い出す。

本書に登場するのは、アリ、ハチ、鳥、そして、バッタ。
お世辞にも人間より賢いようには見えない生き物たちです。

個別に見れば。

ですが、彼らが群れを成した瞬間から一つの全く別のイキモノとなるのです。

アリは人間には作れないような蟻塚を作り、壊れても完璧に修復します。
ハチはミツの場所を的確に絞り込んでいきます。
鳥は見事な一群を成して飛び、バッタはブルドーザーより豪快に全てを壊します。

一匹、一匹にはそんな意志も能力もないのです。
アリはある条件に反応して行動を起こしているだけで、立派な蟻塚を作ろうなんてちっとも考えてゃいない。

それでも、全体としては、素晴らしい力を発揮します。

いや、自然ってスゴいなぁ。

ではで…

と、読了しそうになってふと思いました。
むむ、普段僕らがしていることも全く同じなのではないか、と。

社会を構成する、会社。
会社を構成する、私たち。

やっていることは全く同じじゃないですか。

正直、毎日「この会社をスゴイ会社にしよう」と思って働いている人なんかほとんどいない。
皆、割り当てられた仕事を坦々とこなしている。

ただ、それだけで、車ができ、飛行機は飛び、マネーが世界を駆け巡る。
一人ひとりの能力なんて大したことはなくたって。

なんだ、人間だって同じだったんだ。

構成要素自体にはそんな飛びぬけた存在意義なんていらない。
在ること。それが大切なんだ。

あなたとわたしが生きる世界。
だから、世界は今日も面白い。

生き物のチカラを感じる一冊をぜひ。

ではではー

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