会計士のマネセン

会計・ファイナンスを使いこなすための3冊

前回、会計「を」勉強するからダメなんだというエントリーを書きました。会計は道具だから、使って理解しましょうというお話しです。今回は、会計・ファイナンスを使いこなすという視点からおすすめな3冊を紹介します。


まずは決算書の感じ方から


 
数字は見るな! 3つの図形でわかる決算書超入門(日経ビジネス人文庫)
田中 靖浩
日本経済新聞出版社
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貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の関係を数字を使わずに解説してくれます。会計はイタリアで発明された芸術品の一つです。だから、もっと感覚的に「感じ取って」よいものです。

特に、「使う」という観点からは、全体のプロポーションをつかみ取ることがとても大切になります。なので、図として財務諸表を絵画のようにとらえるという方法はとても良い感覚的な方法です。

作者のセミナーに何回か出席させて頂いたことがあり、話が面白く話すのがとっても上手な方との印象です。もし機会ありましたらそちらも。

 

ビジネスのための会計感覚


 

勝間式「利益の方程式」 ─商売は粉もの屋に学べ!─
勝間 和代
東洋経済新報社
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公認会計士としての会計の感覚と、コンサルタントとしてのビジネスの感覚が上手にミックスされている一冊です。どんな規模のビジネスでも使える考え方で、ビジネスモデルを考えるときに読むと良いと思います。

利益を生み出しやすいビジネスモデルとは何なのか。結果としての会計から、逆説的にプロセスとしてのビジネスモデルを考え出す演繹的なアプローチです。

日々、頑張っているのだけれどもどうも結果につながらない。そんなときは、ビジネスモデルから考えてみると根本的な問題に気づくかもしれません。

 

実際使えるファイナンス


 
道具としてのファイナンス
石野 雄一
日本実業出版社
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稟議書に踊るWACC、NPV、IRRといった横文字。文字だけが一人歩きしていませんか。本書はファイナンスを理解するのではなく、使うことにフォーカスして書かれています。

使うという観点を重視して誰もが使っているExcelをツールとして使っているのも本書の良いところ。Power関数も知らなかったその昔、ずいぶんとお世話になりました。

とかく専門的で文字だけが先行しがちなファイナンス論ですが、最初は道具として割り切った方が良いと思います。ちなみに、通っている大学のファイナンスの大家も本書を推していました。

 

まとめ - 会計・ファイナンスは意思決定のツールです!


細かい点に目が向きがちな会計ですが、ほとんどの人にとって会計は「使う」ものであって「作る」ものではありません。なのに、ついつい簿記3級の勉強から入ってしまう。

簿記の知識も役に立つのですが、本当にビジネスに役に立つのは知識ではなく感覚だと思います。この数字がこう動いたということは、こういうことをして、こうなったからだ、というなんとなくな感覚。経営者の方は簿記の知識がなくともこの会計感覚を持っている方が多いです。

大事なのは数字の先にある意思決定です。ビジネススクールに通って皆さんのニーズを聞くと、会計そのものの勉強にそんなに時間は掛けなくて良いのではないかなぁと感じる次第です。

この機会にぜひ会計感覚、養ってみませんか。

ではではー

 

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会計「を」勉強するからダメなんだ

会計ってもっと簡単に学べないものかしら?


Balancing The Account / kenteegardin

大学院の補講で財務分析とファイナンスの授業を受けてきました。とっても丁寧で分かりやすい授業にインスパイアされてエントリー。

 

会計の原点はイタリアである


そう、あの芸術の国イタリアなんです。14世紀のイタリアで簿記の技術が発明され、ほぼ同時期に発明されたグーテンベルクの活版印刷機によって普及します。

そこから経済活動の盛んな地域で発展を遂げることになります。イタリア⇒オランダ⇒イギリス⇒アメリカと。そして現在は再びヨーロッパに主導権が移ったものの、ヨーロッパが経済の混乱に陥ったのでアメリカが再び主導権を狙うという展開です。

当初インドで開発されていたら、また違った技術になっていたでしょうね。。。


会計はビジネスの世界共通言語である


会計は世界共通のビジネスランゲージです。どの国に行って、違う言葉で話してビジネスをしていたって、最後に表現される財務諸表は同じなのです。

この性質から、会計が分かると世界中のビジネスパーソンと話が通じると言われています。確かに細かく会計基準は異なるものの、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書といった基本財務諸表の形は同じです。

数字と同じで、自分の考えをこんなに簡潔な形で、様々な人に伝えることができる道具はなかなかありません。

 

つまり、会計は「なんとなく」「使える」ことが大切!


完全にイタリアと言語に対する僕の偏見です(笑) ですが、このエントリーで言いたいことはこの一言です。

会計というと、厳密な数字と複雑な基準の理解が必要となるような気がします。確かに作る側にはそのスキルが必要です。ですが、ほとんどの人は使う側の人です。

よく、車の製造と車の運転に例えられます。車を作ることには複雑な知識の積み重ねが必要となりますが、車を運転するのに通常それらの知識は必要ありません。運転スキルという全く別のスキルが必要となるのです。

会計も同じです。会計の結果を使うスキルは作るスキルとは大きく異なります。言語と同じで、使うことが大切なのです。そして、イタリアと同じで、もっと感覚的に考えて良いのです。


まとめ - 会計「を」勉強するからダメなんだ


以前、英語「を」勉強するからダメなんだ、というエントリーを書いたことがあります。英語は道具であり、道具自体の勉強である文法や単語の暗記にフォーカスするよりも、英語を使って何かを学んだ方がもっと身につきますよ、というエントリーです。

会計も同じです。

会計は会社の状況を伝えるための道具です。ですから、会計「を」使って、いろいろなことを考えた方がもっと会計に対する理解もできる、と思うのです。

ということで、今後は会計「で」戦略「を」考えるというエントリーにチャレンジしたいと思っています。よく知られている戦略論を会計の観点から説明してみたいと考えています。

という、次回予告なエントリーでした。

最後に、イタリアの方々、大変失礼致しました。。。

ではではー

 

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【会計士のマネセン4】-今日は明日よりずっとずっと大事です

今年も今日が最後の日となりました。皆さんの一年はどんな年でしたでしょうか。

連載にしようと思っていた会計士のマネセンも、途中の繁忙期や大学院受験などでのびのびになってしまいました。今回は、反省の意味も込めて今日という日の大切さ、今という時間の貴重さについてのお話です。

私たちは今日できることも明日、明後日とついつい延ばしがちです。

明日できることを今日するなとも言いますし、ちょっと明日がんばればすぐに取り戻せる範囲ですしね。そう、ほんの小さな失敗にすぎません。

…ですが、この先延ばし、実際には結構コストがかかっているかもしれません。

<ケース>
あなたは1年間で手元のお金を2倍に増やしたいと考えています。お金が減ることがないとすると、毎日どれだけ手元のお金を増やせば1年間で2倍になるでしょうか。お金は一定の割合で増えてゆき、前の日に稼いだお金も使って増やすこととします。

選択肢
①10%ぐらいかしら。
②いや、15%以上だよ。
③え、実は5%未満かもしれないな。

☆☆☆

如何でしょうか。

正解は、0.2%です。有名な問題ですが、初めての方は「えええ!?そんなに小さいの?」と思って頂けたのではないでしょうか。

これが、「複利」の力です。

意思決定の時には、この複利の力も考えて将来起こることの価値を考えてあげる必要があります。このような考え方を「貨幣の時間価値」を考慮すると呼びます。

貨幣の時間価値とは
貨幣の時間価値とは、貨幣は複利でお金を創りだす力を持っているので、今の貨幣の価値は将来の貨幣の価値よりも高いとする考え方です。

例えば、銀行にお金を預けた時に、1年後に5%の金利が付いて返ってくるとすると(バブル時代ですね)、今の100円と1年後の105円は同じ価値を持っていると考えることができるのです。

つまり、今お金を持っているということは、将来同じお金を持っている場合よりも価値があるということです。

逆もまた然りです。今お金を使うということは、途中もらえるはずの金利を犠牲にすることなります。そのため、将来において支払った金額と全く同じ金額が返ってきたとしてもそれは損なのです。何もせずにもらえたはずのお金、上の場合ですと5円を超えるお金を1年後に上乗せしてもらえる行為だけが成功した投資であったと言えます。

ちなみに、上の例をもう少し将来まで考えてみますと、今の100円は10年後の163円と同じ価値になります。先に延びれば延びる ほどこの差は大きくなり、20年後には265円、30年後には432円にもなってしまいます。10年後の1.5倍、30年後の4.3倍の価値と今の価値は同じということです。

貨幣の時間価値理論を活かすには
貨幣の時間価値理論はとても大切なことを教えてくれます。それは、将来のBestよりも今のBetterの方が価値が高くなることがあるということです。将来のことを今のことと比べる場合には、「複利」で割り引く、つまり、今の価値に直すために価値を小さくして考えてあげる必要があるからです。

冒頭のお話で言いますと、少しずつ明日、また明日とものごとを先延ばしにしていくと、複利の力で将来には想像もつかないような大きな結果として表れてしまうことになります。

やはり逆に考えてみれば複利の力は素晴らしい結果ももたらします。ケースの例で考えた場合、毎日たった0.02%でも進歩することができれば、1年後には2倍の力をつけた貴方が待っているのです。

コツコツの積み重ねが1年後には2倍になって返ってくる。
なんだか夢のある話ではないでしょうか。

結論 -迷わず今やろう!!
そう、結論は迷わず今すぐやろうなのです。私たちの「今」という一瞬は将来の大きな結果を生むためのとっても大切な土壌なのです。

毎日少しずつ。一歩一歩確実に。

簡単なようで、難しいことです。

ですが、遠くに行くためには一歩一歩の積み重ねしかないのですよね。
がんばりましょう。

☆☆☆

会計士のマネセン、如何でしたでしょうか。まずは4回やってみようと思い、始めた企画です。

会計というと、どうしてもお金と切っても切り離せないものではあります。ただ、会計が究極的に目指しているものは、「意思決定のお手伝い」なのだと僕は考えています。

会計はそれ自体が人を幸せにすることはありません。会計はただの鏡です。ありのままを映すことを目的とする鏡。

それは、映る人にとって不快かもしれません。ですが、ありのままを映すことによって初めて映る人は現状を認識することができます。その認識に基づいて意思決定をするべきなのです。

意思決定は全ての人が毎日繰り返しています。朝起きて歯を磨くことも、好きな人に告白することも、会社で経営資源を投下することも全て意思決定の結果です。私たちの人生は意思決定の積み重ねで彩られてゆきます。

その意思決定のために歪みを取り除いて、最高の意思決定を行うお手伝いをする。それが会計の目指すところだと思います。

そして、僕は意思決定の問題である限り、それがどんな種類のものでも会計の考え方は使えるものだと考えています。だから、お金に関することに囚われず、いろいろなところで、「あ、こんな話もあったな」と思い出してもらえたら、と思いながら連載してみました。

このエントリーが、少しでも貴方の意思決定のお役に立てれば幸いです。

決めることを楽しめる貴方に。

ではではー

良いお年を。

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【会計士のマネセン3】-あなたが払うのは本当にそれだけですか

今回はちょうど僕が大学院に行くことを決める時に考えたお話です。

経済活動の中では、お金と交換に様々なものを手に入れます。物であったり、サービスであったり。お金は抽象的で良く分からない「ものの価値」を測ることができるようにしてくれるのです。

そのため、「ものの価値」を正しく測る時には、いくら払っているのかを正確に把握することが必要となります。そうは言っても「いくら払っているのか」を正確に把握することって結構難しいよ、というのが今回の問題です。

<ケース>
しんのすけは、来年より大学院に通うことを計画しています。
では、大学院へと通うことのコストは以下のどれでしょうか。

選択肢
①授業料200万円
②いやいや、教科書代等の付随費用も入れた300万円
③いやいやいや、交通費や交際費も入れた400万円

☆☆☆

如何でしょうか。
活動に要する費用を対価として考える場合には、様々な支出がコストとなりそうですね。
この考え方は会計上はとても正しいです。

しかし、意思決定の際にはもう一つ看過できない大きなコストがあります。
それが「機会費用」です。

機会費用とは
機会費用とは、ある活動をすることによって犠牲となる別の活動のうち、最大の収入をもたらすものの金額です。つまり、ある活動を選択した結果諦めなければならない最大の収入額です。

この機会費用は実際には全く支払いが起きません。
そのため、損をしていることになかなか気付きにくいクセモノです。

しかし、あなたが何かを選ぶとき、かならず他の何かが犠牲になっているのです。

今 回のしんのすけの例で言うと、大学に通うためのコストはトータルで400万円であったとしても、その間に働くことを諦める必要があります。すると、年間 500万円のお給料をもらえていたとして、2年間で1000万円を諦めることとなります。よって、大学のコストは1400万円である、というのが正解で す。

機会費用理論を活かすには
選択はトレードオフです。何かを得ようと思った時には何かを諦めなければいけません。機会費用はこの「諦めるもの」もちゃんと評価してあげないといけないよ、ということを教えてくれます。

ただ、このような判断は私たちはごくごく普通にしています。

例えば、忘年会。12月は忘年会シーズンであったため、複数の忘年会の予定が重なってしまった方も多いでしょう。重なった忘年会で、どちらか一つを選ぶとき、他の一つを諦めなければいけません。

「あ、もったいない。その分出席する忘年会ではしっかり楽しもう。」
そんな風に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。

普通の忘年会に、「諦めた忘年会プレミアム」が付くことによってよりいっそう大事な忘年会に思えてくる。そんな考え方ができるあなたは、とっても機会費用上手だと言えます。

結論 -失ったものの分まで楽しもう!!
人生ではいろいろなものを得る代わりに、いろいろなものを失います。
それもひとつひとつの選択の結果なのです。

今、あなたが選んでいるものは、他の様々な選ばれなかったものと引き換えに得たものです。そう、実は今の状況はすごいコストの上に成り立っているものなのです。

失ったものプレミアムを考えたら、今の状況を楽しまないととっても損だと思いませんか。

プレミアムな貴方の選択に。

ではではー

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【会計士のマネセン2】-勝率5割では人は動かない?

ほとんどの経営者が言う言葉に、「勝率7割で勝負しろ」という言葉があります。
9割を待っていたら手遅れで、5割では機が熟していないという意味です。

ある意味その通りです。事業を安定させるためには勝率7割で勝負することが必要です。

ですが、素晴らしい経営者は本当の勝負どころでは50:50でも勝負をかけてきます。
これは何故なのか、というのが今回のお話です。

ケーススタディ
次のケース1と2では、あなたはどちらを選びますか。

<ケース1>
あなたは、クイズ番組で最後の問題まで勝ち抜きました。最後の問題にチャレンジするかにおいて次の選択肢が与えられています。

選択肢
①ここで断念。500万円がを手に入れて終了。
②2択クイズにチャレンジ。正解すれば1000万円ゲットも、外れれば賞金ゼロ。

<ケース2>
あなたは1000万円の借金をしてしまいました。あなたに残された選択肢は2つです。

選択肢
①貸し手と相談。500万円免除してもらい、借金を500万円にしてもらいます。
②コイントスをします。当たれば1000万円全額チャラですが、裏が出たら借金の金額は変わりません。

☆☆☆

如何でしたでしょうか。実験の結果、多くの人がケース1では①を、ケース2では②を選ぶことが分かっています。

ですが、実はケース①とケース②は言い方を変えただけで全く同じ問題なのです。500万円をキープするか、リスクを取って1000万円を目指すのか、というものです。

このように私たちの意思決定には問題の出され方によってバイアスがかかってしまうのです。このような意思決定の過程に関する理論をプロスペクト理論と呼びます。

プロスペクト理論とは
プロスペクト理論は、不確実性を含む問題に対する意思決定についての理論です。
エッセンスを一言で言えば、損と得は非対照ということです。

人は損を嫌い、得を好みます。そのため、不確実でも損を避けられる可能性があるならばその選択肢を選び、確実に得をすることができるのならばその選択肢を選ぶ傾向があるのです。

この損と得の性向は重大な判断になるほど顕著になってきます。

例えば飛行機で不時着をするか飛び降りるかの意思決定を迫られたとします。飛び降りる策では100人中50人が助かります。一方で、不時着を選択すると100人助かるか、全員助からないかのどちらかです。この問題の場合には、ほとんどの人が後者を選ぶことが分かっています。

プロスペクト理論を活かすには
人生の中で、どんなに考えても50:50の確率でしか先を見通せないことはたくさんあります。その時に、上記のようなバイアスがかかっていることを知っているだけで、より冷静に判断ができるようになります。

例えば転職と現在の職場を天秤にかけているとします。この場合に両者の条件がほぼ同じであると考えている時には、自分が確実な選択肢、つまり今の職場を選ぶ傾向が強いことはぜひ知っておくべきです。

本当は新しい職場で活躍するチャンスが50%もあったとしても、今の職場に留まる選択を採ってしまいます。つまり、私たちはチャンスを逃しがちであるということです。

本来はチャンスを逃してしまった時の損失についてももっと考えるべきなのです。

逆に、ピンチの時には反対の傾向が生じます。ピンチを脱出するためにギャンブル的な手段を取りやすいのです。経営が上手くいっていない会社が一発逆転に賭けるのもこの理論から説明できそうです。

結論 -勝率5割でも直感を信じよう!!
勝率5割では足りないと感じることは、この理論からは当り前なのです。

そんな時は、不確実さを含む選択肢を嫌わないで、もう一度冷静に考えてみましょう。実はチャンスを逃しそうになっているかもしれません。最後は直観を信じて決断です。

あと一歩が踏み出せない貴方に。

ではではー

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【会計士のマネセン1】-過去は水に流しましょう

会計士として働いているとお金の理論に触れる機会が人より多くあります。お金に関する理論というのは人を惹きつけるのか、古今東西さまざまな人が研究しているのです。

日本では「武士は食わねど高楊枝」がカッコいいという文化があり、お金に関する話はあまりおおっぴらにしないものです。ですが、お金の話の中には「なんでこれを中学校で教えてくれないの!?」と思うような大事なもの、面白いものがたくさんあります。

そこで、今回から全4回で、「会計士のマネセン」と題してお金に関する理論をご紹介しようという企画を思い至りまして。

皆さまのマネーのセンスのアップに役立てるよう頑張ります。

第一回-過去は水に流しましょう

<ケース>
あなたは家を建てるためにコツコツと貯金してきた3200万円をつぎ込みました。もう少しで完成‼…だったのですが、突然の台風のせいで地盤が緩んでしまいました。予定されていた建設費用は4000万円。しかし、業者さんにトータルで5000万円かかるという見積を出されてしまいました。

さて、ここであなたがどう思うべきか。

①いやいや、3200万円も使っちゃったのだから最後までいかないと。
②えー1800万円もかかるんじゃ、マンション買えちゃうよ。
③台風って…orz

個人的には完全に③ですが、タイトルからも分かるように正解は②です。

意思決定の際に考慮してはいけないもの。
それが「埋没原価」です。

埋没原価とは

埋没原価とは、何かを決める時に参考とならない費用です。
意思決定において埋没してしまう費用なので埋没原価と呼ばれます。

典型的なのが、今回の例のように過去に支出した金額です。
物を買う時に考えるべきは、「あといくら出したら何を買えるか」ということです。

お金の支出がかさばると、人は既に支払ったお金に価値を見出すようになってしまいます。こんなに払ったのだからもうやめられない、と。つまり、今後払うべき1800万円よりも、既に払った3200万円を重視してしまうのです。

本来ならば3200万円は忘れて、1800万円と家が与えてくれる価値を比べることが、その時点での正しい意思決定となります。1800万円あればいろいろなことが出来るのです。なお、この家のために「あきらめた他のことの価値」を「機会費用」と呼びます。そちらは、また別の機会に。

埋没原価理論の活かし方

埋没原価理論は生活の様々なところで役に立ちます。一番威力を発揮するのは、「微妙になってしまった恋人と付き合い続けるか別れるか」という意思決定です。

恋人と付き合い続けるか別れるかの意思決定問題において、過去の経験は完全に埋没原価です。そう。楽しい思い出、昔はステキだった恋人の写真、おそろいのアクセサリー。全ては埋没原価です。

恋人と付き合い続けるかどうかについて考えなければならないのは、将来において幸せになれるかどうかです。あなたは、恋人のために今後もたくさん苦労するかもしれません。ですが、それ以上に幸せになれそうならば一緒にいるべきなのです。

逆に、もう心は冷めているのだけれども、情が湧いちゃって。。。というのは完全に埋没原価にひっかかっています。

はい。

結論-将来だけを見て行こう!

そう。この理論はひとつのシンプルで力強い結論を与えてくれます。
過去のことにクヨクヨしないで、将来を見て決めましょうということです。

埋没原価。過去のしがらみにからまれてしまっている貴方に。

☆☆☆

このように、お金に関する理論を知ることは、「理論的に正しい意思決定」を助けてくれます。理論を知っているか知らないのかで意思決定の質は違ってくるはずです。

マネセンではお金の理論を日常生活で応用することも考えたいと思います。
ぜひ、お付き合い頂けますと幸いです。

ではではー

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